複眼的思考 2014 12 21
書名 ウォール街から日本を見れば
2015世界大恐慌の足音が聴こえる
著者 大竹 愼一 徳間書店
大竹氏の本は、何冊か読んでいますが、
この人の特徴は、日本人にしては珍しく、
「複眼的思考」ができる人であるということです。
さっそく引用を始めましょう。
「アメリカの失業率が下落するということは、
アメリカ株にとって悪いことが起こることを意味する」
「失業率が6%を切った場合、アメリカの金融界はイエローゾーンに突入する」
「そして、失業率が5.5%を切るならば、完全にレッドゾーン突入となる」
(引用、以上)
経済学を学んだ人ならば、
「失業率が低下することは、よいことではないか」と思うでしょう。
しかし、「理論」と「実践」は違うのです。
リーマン・ショック後のアメリカ経済において、
FRBは、世界を洪水にさせるほどドルを大量供給しました。
この「洪水ドル」が、融資などの事業に回れば問題なかったのですが、
株式市場に直行してしまった現状があります。
これで、アメリカの株式市場は「好景気」となりましたが、
昨年ぐらいから、FRBは、「洪水作戦」をやめたいと言い出しているのです。
しかし、そうなると、困るのが、アメリカの株式市場です。
「誰か、FRBの後を継いでほしい」という声が、
NYダウに時々現れる「乱高下」だと思われます。
大竹氏は、こう書いています。
失業率が5.5%を切るならば、
労賃コストが急上昇する。
その時点で、必ず「金融引き締め」に舵が切られる。
これは、アメリカの歴史を振り返ってみればわかる。
FRBは、実質ゼロの金融政策を終了させ、
今度は、金利を上げてくる。
そうなれば、最高値で推移してきたアメリカの株式相場は暴落する。
(引用、以上)
私は、過去に、何度か、
「リーマン・ショックを超える大混乱が起こる可能性がある」と書いています。
政治家にも官僚にも、「問題の先送り」という世界共通の文化があります。
希望的な観測を書くならば、
問題を先送りしているうちに、
いや応急措置をしているうちに、
経済が好転すればよかったということです。
経済は、やがて別の次元へシフトする。
アダム・スミスやケインズが作った経済が古いものとなり、
「新しい経済」が始まるかもしれません。
現代人は、中世の人たちの暮らしを見て、
「中世の人たちは、経済学を知らなかった」と言うかもしれませんが、
後世の人たちは、そんな現代人を見て、
「21世紀初頭まで、経済学が確立していなかった」と言うかもしれません。
「大恐慌」という不安なことは書きたくありませんが、
それが、別の次元へシフトする「新しい経済」のための「産みの苦しみ」となるでしょう。